今年2017年の1月中旬から書きはじめたブログ。
毎日一歩一歩をあゆみながら、ふとこれまでの歩みをふりかえれば、300ほどの文章を紡いできたことに気づく。
ブログとは別に少しずつ書き溜めている文章と異なり、ブログは、なるべくその日に思いついたことを書くようにしている。
最初から「枠」の中にはめずに、自由にひろがっていくトピックについて書いている。
いろいろなトピックが雑多にならんでいるのは、そうした理由からである。
けれども、雑多に見えても、ふりかえってみれば、そこに「思考の流れ」や「生きることの焦点」が見えてくる。
ここ香港に、すでに10年以上暮らしながら、「テーマ」として追ってきたことのひとつに、「生活のスピード」がある。
以前ふれた『No City for Slow Men』(Jason Y. Ng著, Blacksmith Books刊)という本のタイトルにもあるように、香港は「Slow Men」の都市ではない。
圧倒的なスピードでうごきつづけることで、生きることのリズムをつくっている。
そのような香港も、ぼくの身体感覚と観察において、この10年は、スピードにおいてけっして一様ではなかったように、思う。
そのような「テーマ」を追っていると、ショッピングモールで、たまたま出会う、次のような言葉が目に自然とはいってくる。
「THERE is NO PAUSE in LIFE」
ショッピングモールの「改装中の敷地の壁」に、店舗の広告と共に、書かれている。
あらゆる場所ですすんでいる「改装」自体が、香港のスピードの象徴のひとつのようなところがあるが、「改装にもかかわらず、店舗は休むことなく営業中」ということのメッセージのようだ。
あるいは、人生は「NO PAUSE」だから店舗は営業している、というようなメッセージなのかもしれない。
言葉を受けとる側の関心のおきどころによって、受けとられ方が異なる言葉だ。
いずれにしろ、香港では、「休む間もなく」ということが生活のすみずみにまで浸透しているから、「NO PAUSE in LIFE」を「普通のこと」として読んでしまう。
「THERE is NO PAUSE in LIFE」という言葉とは逆に、「PAUSE in LIFE」が極めて大切になっていると、ぼくは思う。
「PAUSE」で思い起こすのは、リーダーシップ論の著作として、前にすすむための「Pause」を提示している、『The Pause Principles: Step Back to Lead Forward』(Kevin Cashman著、Berrett-Koehler刊)という興味深い本である。
「立ち止まって考えること」の大切さを感じながら、しかし「香港という場」がぼくに語りかけてくるのは、「動きながら考えること」である。
香港はその意味で「THERE is NO PAUSE」なのだけれど、実際にそこで暮らす人たちは、近年ますます、「PAUSE」を生活の中に組み込もうとしているように、ぼくには見える。
その「方法」はひとそれぞれにいろいろである。
仕事で「考える場と時間」をつくることもそうであるし、マラソンやヨガなどもある意味そうであるだろうし、海外の「田舎」(例えば、ぼくも行ったことのないような日本の田舎)への旅もその一形態であるかもしれない。
「No City for Slow Men」(Jason Y. Ng)の香港は、全体としては「NO PAUSE」でありながら、その周辺に「PAUSE」をする人たちを生みだしてきている。
とはいえ、「PAUSE」をどのようにとり、その機会をどのように使い、Kevin Cashmanが言うように「Step Back to Lead Forward」できるかどうかは、それぞれの個人にかかっている。