ぼくの「本の読み方」(学び方)のひとつの例。- Terry Warner著『Oxford Papers』を題材に。 / by Jun Nakajima

ぼくにとってとても刺激的で興味が尽きないけれど、格闘している書籍。

『Oxford Papers』と題された書籍。

著者は、哲学者であり、The Arbinger Instituteの創業者であるC. Terry Warner。

The Arbinger Instituteは、アメリカに拠点をおき、個人・組織・企業に研修、コンサルティング、コーチングなどを提供する機関である。

The Arbinger Instituteの名前のもとに出版されたベストセラーに、『Leadership and Self-Deception - getting out of the box』がある。

日本でも、『自分の小さな「箱」から脱出する方法』(大和書房)として出版され、ベストセラーとなり、今でも読者を獲得している。

 

『Oxford Papers』(The Arbinger Institute)は、『Leadership and Self-Deception - getting out of the box』(『自分の小さな「箱」から脱出する方法』)の理論的バックボーンとなった論文集である。

所収されている論稿は、次のような内容だ。

【Contents 目次】

I   Anger and Similar Delusions
II  Locating Agency
III Self-deception as a Vacuous Experience
IV The Social Construction of Basic Misconceptions of Behaviour
V  Irony, Self-deception and Understanding

 

「self-deception(自己欺瞞、自分をだますこと)」の研究に献身してきたC. Terry Warner氏の理論が集められており(Oxfordで準備された文章である)、哲学者・心理学者Ram Harreが評するように、この理論的な仕事は「深く、そして重要」である。

その深さとアカデミックな書式・文体もあり、とても難しく、とっつきにくい内容だ。

その難しさゆえに、もっと「一般的な読者」向けにと書かれたのが、『Leadership and Self-Deception - getting out of the box』(『自分の小さな「箱」から脱出する方法』)である。

でも、この『Leadership and Self-Deception』も、実はとても深い。

これらの深さと複雑さは、「self-deception(自己欺瞞、自分をだますこと)」そのものから来ている。

むしろ、だからこそ、「self-deception(自己欺瞞、自分をだますこと)」が、強固な仕方で、ぼくたちを「箱」のなかに閉じ込めているとも言える。

「箱」は、自分自身が自分自身をだましながらつくる「現実」という名の「世界」だ。

『Leadership and Self-Deception』では、物語仕立てで、チーム・組織における自己欺瞞、家庭における自己欺瞞の話が展開される。

 

邦題の『自分の小さな「箱」から脱出する方法』は、「勘違い」を起こしやすい。

「自分の思考を出て考えよう」的な、浅いイメージを起こしがちだ。

少なくとも、ぼくはそう感じて、長いあいだ、この書籍を読まずにいた。

しかし、読み始めて、その内容とメッセージの重要さと深さを認識し、英語のオリジナルタイトルにある「Leadership and Self-deception」の意味合いがよくわかった。

その「感動」にひかれるままに、数年前に、『Oxford Papers』をThe Arbinger Instituteから取り寄せることになった。

本を開いては1ページ読み、閉じてはまた開くことを、ときおりしながら、この「深さと重要さ」に格闘している。

 

そのような本だから、誰にでもすすめられる本ではない。

でも、『Leadership and Self-Deception - getting out of the box』(『自分の小さな「箱」から脱出する方法』)はすすめることのできる本だ。

「Takeaway」として要点を簡潔に書きすぎると、間違って、あるいは浅く理解されてしまうので、ここでは書かないけれど、もし心と脳に「ひっかかる」ものを感じたら、ぜひ読むことをおすすめする。

そこでの感動と「知のとびら」の開き方によっては、『Oxford Papers』に導かれるのもひとつだ。

 

この書籍の「活用方法」(効用)が気になる方向けには、英語版の第二版の終わりに書かれているガイドが役に立つ。

書籍が役に立てられてきた5つの領域は次の通りである。

  1. 企業の採用におけるスクリーニングと採用
  2. リーダーシップとチームビルディング
  3. 紛争解決
  4. 説明責任(アカウンタビリティ)の変容
  5. 個人の成長と発展

 

ぼくの「活用の仕方」で言えば、「ぼく自身の実践」と『Leadership and Self-Deception - getting out of the box』と『Oxford Papers』を自由に行き来しながら、考えては実践し、実践しては考えることを繰り返している。

そのような繰り返しのなかで、先日ブログにも書いたDon Miguel Ruiz著『The Four Agreements』のなかにある、「Agreements(約束・契約)」というコンセプトとの交差をみつける。

それから、「あぁ、「繰り返し」と言えば、片岡鶴太郎が「反復」を一生懸命に語っていたなぁ」とも思う。

学びと実践のいろいろが、いろいろに「繋がる」という学びの本質を、ぼくは楽しむ。

「本を読む」ということでは、ぼくは今は「多読型」だ(もちろん、「軸」をつくるためには「深く」読み込むことが大切であることを付け加えておきたい)。

それも「平行多読型」である。

何百冊を平行して読む。

「繋がる」という学びの本質を楽しみながら、実際に「変わること」の確かな拠点とするために。