エルヴィス・プレスリーの名曲「Can't Help Falling in Love」。- 「名曲」のなかの<名曲>というもの。 / by Jun Nakajima

Elvis Presley(エルヴィス・プレスリー、1935ー1977)の名曲「Can’t Help Falling in Love」(1961年)。

日本語訳では「好きにならずにはいられない」(英語を学んでいたときに「can’t help …ing」で「…せずにいられない」という構文を習って、この名曲がまるで「例文」のように、ぼくのなかに残っていることはさておき。)。

エルヴィス・プレスリーの代表的なバラードである。

 

静かに曲の前奏がはじまり、そしてエルヴィス・プレスリーの、太く、深い声がつづいてゆく。

 

Wise men say
Only fools rush in
But I can’t help falling in love with you

Elvis Presley “Can’t Help Falling in Love”  (※Apple Music表示のLyricsより)

 

「Apple Music」で、エルヴィスが歌ういくつかのバージョン(ライブ版含む)、またさまざまなアーティストによって歌われる「Can’t Help Falling in Love」を聞く。

サブスクリプションの音楽配信の楽しみ方のひとつである。

「曲」で検索して、いろいろなバージョンを聞くことができる。

20年前は、東京の街を歩いて、CD・レコード店を見つけては、そこでCDやレコードを探していたけれど、今では、手元のスマートフォンの「検索」で探すことができる。

エルヴィスの名曲「Can’t Help Falling in Love」の元の曲と言われる、18世紀フランスの曲「Plaisir d’Amour(愛の喜び)」(※Wikipedia「Can’t Help Falling in Love」参照)のカバー曲も、Apple Musicで検索すればすぐに見つかる。

歩いて見つける楽しみはないけれど、なにはともあれ、いろいろと聞くことのできる楽しみはある。

 

エルヴィスの名曲「Can’t Help Falling in Love」の、それらさまざまなバージョンを聞きながら、ふと、ぼくは感じる。

やはり、エルヴィス・プレスリーが歌う「Can’t Help Falling in Love」が、心にしみてくる。

そして、(ここが大切なのだけれど)それはあらゆる側面において、エルヴィスの歌声が、圧倒的に心にせまってくる。

一般的に言って、カバー曲はときに、原曲よりもよく演奏され歌われることもあるし、またそこまでではなくても、原曲に異なった光をあてることもある。

そのような光に照らされた曲の色合いを見つけることができる。

しかし、名曲「Can’t Help Falling in Love」は、やはり、エルヴィス・プレスリーの歌なのだ。

例外としてあるとすれば、ロカビリーバンドStray Catsのリードシンガー&ギタリストであったBrian Setzerが、日本の川崎で行ったアコースティックライブで弾き語りした「Can’t Help Falling in Love」は、エルヴィスの歌声がもつ何かを共有しているように、ぼくには聞こえてくる。

それにしても、やはりエルヴィスの「Can’t Help Falling in Love」に戻ってきてしまうのは、ただ、曲に対する、ぼくの「個人的な記憶のぬくもり」が理由かもしれない。

でも、ぼくは思う。

曲には、多くの人たちにカバーされていくような「名曲」がある。

そのような「名曲」のなかには、ときに、曲を創った人(たち)、演奏する人(たち)、歌う人(たち)、製作者(たち)などによる、幸福な組み合わせによって、「Can’t Help Falling in Love」と言えばやはりエルヴィス・プレスリーというような、そのような<名曲>があるということ。

 

「Can’t Help Falling in Love」は、1960年代から1970年代にかけて、エルヴィス・プレスリーによるショーの最後の曲として歌われていたという。

ライブアルバムなどの最後の曲に、確かに、アップテンポの「Can’t Help Falling in Love」があったりする。

ライブコンサートでの最後の曲として選ばれていた理由を、ぼくは知らない。

しかし、表面的な理由がどうであれ、エルヴィス・プレスリーにとって、この曲はやはり何か特別な響きと思い出を宿していたのではないかと、ぼくは想像する。

そして、1977年6月、エルヴィスの生涯のライブコンサートの最後のコンサートとなった舞台で、最後に歌った曲が、この名曲「Can’t Help Falling in Love」であった(※Wikipedia「Can’t Help Falling in Love」参照)。

その二ヶ月後、エルヴィスは42歳でこの世を去る。

ぼくはその42歳の年に到達し、エルヴィスが「Can’t Help Falling in Love」の歌に込めていた「何か」に思いをよせる。