ジム・キャリー(Jim Carrey)の生と言葉を「導きの糸」にして。- 「しあわせ」ということのメモ。 / by Jun Nakajima

「チキンスープ」と呼ばれる著作シリーズで有名なジャック・キャンフィールド(Jack Canfield)は、「成功原則」をまとめた著作(『The Success Principles』)のなかで、コメディ俳優であるジム・キャリー(Jim Carrey)の「成功秘話」を取り上げている。

 

1990年頃、ジム・キャリーがカナダの売れない若いコメディアンで、ロサンゼルスに向かっていたときのこと、彼は古いトヨタ車を運転して、Mulholland通りに行った。そこに座って、下にひろがる都会を前に自分の将来を夢見ながら、彼は1,000万ドルの小切手を自分自身に書いたのであった。その小切手は1995年の感謝祭の日付が入れられ、「演技に対して」という注記が付けられた。その日から彼は、この小切手を自分の財布の中に入れて持ち歩いたのであった。残りは、言われるように、歴史である。…

Jack Canfield『The Success Principles』HarperCollins, 2005 ※日本語訳はブログ著者

 

歴史だと言われるように、ジム・キャリーは、1995年までに2,000万ドルまでに自分の演技の価値を上げることになる。

また、父親が1994年に亡くなったときは、彼の棺の中に1,000万ドルの小切手を置いたという。

ジャック・キャンフィールドは、ジム・キャリーの実話をもとに、「WRITE YOURSELF A CHECK」(自分自身に小切手を書く)というタイトルのもとに、「目標」を立てそれを達成するための方法のひとつを取り出している。

 

「成功原則」としてここで終わるのもひとつだけれども、ジム・キャリーの人生は、そこで止まるものではなかった。

のちに、彼は、つぎのように語っている。

 

I think everybody should get rich and famous and do everything they ever dreamed of so they can see that it’s not the answer.

- Jim Carrey

 

「誰もがお金持ちになり、有名になって、夢見たことをすべてすべきだとぼくは思う。そうすれば、それが答えではないということがわかるから」と、ジム・キャリーは語る。

どのような場所で、誰に向けられて、どのように語られたのか、ぼくはわからない。

けれども、あの、ジム・キャリーだからこそ、この言葉を聞く者にひびく何かがあるようにも思う。

それが答えではないんだ、と。

 

そんな折に、シンガーソングライターのジェイソン・ムラーズ(Jason Mraz)の新しいアルバム『Know.』を聴いていたら、その最後の曲がつぎのような曲名であった。

 

「Love Is Still the Answer」

 

とても暖かい曲たちがつまった、この新しいアルバムの最後に、「愛がそれでも答えなんだ」とジェイソン・ムラーズは置いている。

「それでも(Still)」と。

もちろん、ジム・キャリーが語るところと文脈は異なるのだけれども、それは、ぼくの中で、あくまでもぼくの中で、ひとつのつながりを描く。

 

ジム・キャリーが語るのは、おそらく、「しあわせ」ということの答えはそこにはないんだということである。

「しあわせ」というものを外に外に向けて探していっても、それはどこかで、果ててしまうのだということでもある。

「しあわせ」は、見田宗介が<幸福感受性>と書くように、それを<感受する力>を、じぶんの内に、透明に、高めてゆくことのなかに、ただ自然に現出するように、ぼくは思う。