人生を駆動するのは「Love or Fear」か。- ジム・キャリー(Jim Carrey)の「大学卒業式における訓示」に魅かれて。 / by Jun Nakajima

「大学卒業式における訓示(Commencement Address)」としては、よく取り上げられるスティーブ・ジョブズの訓示があったりするけれども、ぼくがとりわけ好きな訓示は、ジム・キャリー(Jim Carrey)の訓示である。

マハリシ大学の2014年度卒業式における訓示(Commencement Address)は、いわば「名作」である。

ジム・キャリーのあの表情とユーモアとそれによる雰囲気づくり、言葉の選び方からスピーチのリズム、スピーチ全体の物語性、会場に用意されたジム・キャリーの絵画、そしてスピーチのメッセージ性と深さなど、どこから見ても、とても魅力的なスピーチである。

「名作」であるものとして、そのスピーチが届けられた大学の卒業生だけでなく、観る者/聴く者たちの印象に深く残るものとなっている。

大学によってYouTubeでその全スピーチが公開されているので、動画(英語等サブタイトル付き)で、ぼくたちはそれを見ることができる。

 

ジム・キャリーのことを少しブログ(「ジム・キャリー(Jim Carrey)の生と言葉を「導きの糸」にして。- 「しあわせ」ということのメモ。」)で書き、ふと、この訓示を再び見たくなって見ていたら、ちょうど、そのブログとも交差することが語られていたことを発見する。

別のブログで取り上げたのは、「I think everybody should get rich and famous and do everything they ever dreamed of so they can see that it’s not the answer.」(「誰もがお金持ちになり、有名になって、夢見たことをすべてすべきだとぼくは思う。そうすれば、それが答えではないということがわかるから」)という、ジム・キャリーの言葉であった。

このことについてよく語ってきたこととし、ジム・キャリーは訓示の中で、つぎのように語っている。

 

…I’ve often said that I wish people could realize all their dreams in wealth and fame so that they could see that it’s not where you’re going to find your sense of completion.

Jim Carrey “Full Speech: Jim Carrey’s Commencement Address at the 2014 MUM Graduation” 

 

「私はよく言ってきたのですが、人びとが富と名声におけるすべての夢を現実化できるのを願っていると。そうすれば彼/彼女らは、そこが自分の達成感を見つけるところではないということがわかるだろうから」と。

前述における「それが答えではない」ということが、「そこは達成感を見つける場所ではない」と言い換えられている。

 

ところで、「それが答えではない」という表現に導かれて、ぼくは音楽家のジェイソン・ムラーズ(Jason Mraz)の新作の最後の曲に、「Love Is Still the Answer」という素敵な曲の、その曲名に目が行ったのであった。

言葉の表現を介した、ジム・キャリーからジェイソン・ムラーズへの、その「飛躍」は、まったくもって、ぼくの頭の中での出来事であった。

けれども、ジム・キャリーの訓示を聴いていたら、「Love or Fear」(愛か怖れか)が、全体を貫くテーマとして選びとられていたことを知る。

例えば、ジム・キャリーはこんなふうに語る。

 

…Now fear is going to be a player in your life. You get to decide how much you could spend your whole life imagining ghosts, worrying about the pathway to the future but all there will ever be is what’s happening here in the decisions we make in this moment which are based in either love or fear.  So many of us choose our path out of fear disguised as practicality. …
「さて、怖れはあなたの人生のプレイヤーになるでしょう。あなたは決めなければいけない。自分の人生のどのくらいを、ゴーストを想像し、未来につづく道を心配しながら過ごすのかということを。けれども、これから起きることのすべては、この瞬間におけるわたしたちの決断の中に起きていることなのです。つまり、愛に基礎をおく決断なのか、あるいは怖れに基礎をおく決断なのか。わたしたちの多くは、実用・実際(practicality)という姿に粉飾した怖れから、自分たちの道を選んでいるのです。」

Jim Carrey “Full Speech: Jim Carrey’s Commencement Address at the 2014 MUM Graduation”  ※日本語訳はブログ著者

 

瞬間瞬間の決断が「愛からなのか、怖れからなのか」、ぼくたちは、その都度、自分に問うことができる。

じぶんの決断が、じぶんの抱く「怖れ」から来ていないか。

とてもシンプルな問いだけれども、それは日々のさまざまな決断の「歪み」に光をあてる問いでもある。

 

そして、ジム・キャリーは、訓示の最後を、つぎのようにとじている。

 

…You are ready and able to do beautiful things in this world and after you walk through those doors today, you will only ever have two choices: Love or Fear.  Choose love and don’t ever let fear turn you against your playful heart.
「あなたたちはこの世界で美しいことをする準備ができているし、そうすることができるのです。今日そこのドアを通り歩いて出ていったあと、あなたたちには二つの選択肢があるだけなのです。愛か、怖れか。愛を選ぶこと、そして怖れでもって遊び好きな心に対峙しないでください。」

Jim Carrey “Full Speech: Jim Carrey’s Commencement Address at the 2014 MUM Graduation”  ※日本語訳はブログ著者

 

だいぶ前に観た/聴いたときには飛ばしてしまっていた箇所が、今のぼくに届いてくる。