ここ香港は、「中秋節の翌日」が祝日である。
中秋節の夜は、家族が集まり一緒に食事をとったり、子供たちが提灯を手に公園などにくりだす。
小さな子供たちはいつもならば家にいる夜の時間帯に、外に出て、その「非日常」の世界を楽しむ。
夜遅くになるからなのか、翌日、つまり中秋節の翌日の朝は、比較的、しずかな時間がながれるのだが、今年も、しずかで穏やかな雰囲気であった。
中秋節の風習として「月餅 moon cake」を食べる。
今年は香港の友人から月餅をありがたくいただいたので、中秋節に月餅を楽しんだ。
昨年のブログでは、「香港で、(食べずに)「月餅」を楽しむ方法。- 月餅の種類と売られ方に惹きよせられて。」を書いた。
食べる/食べないにかかわらず、香港に暮らすなかで、「月餅」の風景は興味深いものだ。
その月餅の、「種類」と「売られ方」だけを観察していても、いろいろな発見があって、面白い。
昨年のブログでは、「種類」と「売られ方」について、つぎのようにまとめた。
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まずは、月餅の「種類」である。
大きくは、甘系と塩系がある。
そこから、それぞれに数え切れないほどに、中身のバリエーションができていく。
中身のバリエーションも、ただ具を変えていくということにとどまらずに、例えば、下記のような広がりをつくっている。
● ブランド志向:ブランド名が刻印された月餅
● 健康志向:例えば「低糖」、保存料調整などの月餅
● モダン:アイス月餅、ドリアン入りの月餅など
● 月餅の「形」をしたスイーツ:月餅の形をした「チョコレート」など
● 月餅の「入れ物」の原型だけを残したもの:容器が月餅で中身は他のお菓子など
● 製造場所:「香港製造」に刻印が押された月餅
● その他
この10年を見てきても、香港における月餅のバリエーションの広がりには驚かされる。
月餅の「種類」に加えて、「売られ方」にも、いつも惹きつけられてしまう。
例えば、次のようなところである。
● 販売時期:いつ頃から売られ、いつ頃にピークを迎えるかなど
● ディスカウント(早割):早割価格が設定されていたりする
● ディスカウント(量):「何箱購入で、何箱フリー」的なディスカウント
● ディスカウント(その他):中秋節後のディスカウントなど
● 個別売り/箱売り:ひとつで購入できるか、箱での購入かなど
● 販売場所:店頭だけでなく、特設場所など
● その他
クーポンなどもあって、売られ方のバリエーションも広がりをもっている。
これらに加えて、プロモーションの仕方なども観察しながら、その売られ方に香港の凄さを見ることができる。
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2018年も、老舗の月餅から、日系のパン屋さん・ケーキ屋さんの月餅に至るまで、さまざまな「月餅」(それに類似したもの含む)が、香港の街やスーパーマーケットやショッピングモールの店頭を彩っていた。
若い世代などは「伝統的な」月餅に関心を示さない人たちもいるだろうし、だから月餅の「形」をした「スイーツ」などへひろがりを見せてきたところではあるのだけれども、それでも、<月餅という文化>の力強さのようなものを感じてやまない。
<月餅という文化>は、食べ物としての「月餅」のことだけではなく、ギフトとしての月餅、そこに託された人と人とのつながりなどを含めた文化のことである。
毎年毎年くりかえされ、つみかさなるなかで、文化の地層がつくられてゆく。
そこには、あたりまえだけれど、歴史があり、人それぞれの記憶や思いが、目には見えない仕方で積層している。
そのようなことを考えながら、昨晩は雲と雨で見えなかった「月」が、今晩は見えるだろうかと、雲に覆われた、香港の夜空を窓越しに見上げる。