真木悠介先生の分類の仕様のない
名著『気流の鳴る音 交響するコミューン』。
美しい本である。
その「結」にあたる章は、
「根をもつことと翼をもつこと」
と題されている。
人間の根源的な欲求は、
・根をもつことの欲求
・翼をもつことの欲求
であるという。
「翼」をひろげ、グローバルに、世界で
生きていきながら、
ぼくも「根」をもちたい欲求にかられる
こともある。
人は、家族やふるさとやコミュニティに
「根」をもとめる。
ぼくは「根なし草」になってしまうのでは
ないかという恐れも、以前はもっていた。
そんなときに出会った思想である。
<根をもつことと翼をもつこと>を
ひとつのものとする道はある。
それは全世界をふるさととすることだ。
真木悠介『気流の鳴る音』(筑摩書房)
この美しい文章は、20代のぼくから、
悩みと葛藤と不安と恐怖を、シンプルに
解き放ってくれたのだ。
東京で、西アフリカのシエラレオネで、
それから東ティモールと香港と続く
「人生の旅」において、『気流の鳴る音』
は、ぼくの旅の同伴者である。
1977年に発刊された『気流の鳴る音』
(初稿は1976年)は、今でも、そして
今だからこそ、尽きることのない
インスピレーションを、ぼくに与えて
くれる。