🤳 by Jun Nakajima
英語で歌われる古い民謡(フォークソング)に、「Row, Row, Row Your Boat」という民謡がある。
子供たちも口ずさむこの民謡・童歌の「起源」は、19世紀におけるアメリカの吟遊詩人の芸にある(※Wikipedia)とも言われているが、実際のところは定かではない。
子供たちにもよく知られているということで、YouTubeでも、さまざまな動画がアップされている。
この民謡の歌詞は、つぎのようなものだ。
Row, row, row your boat
Gently down the stream
Merrily, merrily, merrily, merrily
Life is but a dream
「Row, Row, Row Your Boat」*Wikipedia “Row, Row, Row Your Boat”より。
この歌詞が、繰り返し繰り返し、まるでボートをゆっくり漕ぐように、つづいてゆく。
ぼくが惹かれてやまないのは、この「歌詞」であり、そのシンプルさのなかに描かれる人生観・世界観のようなもののひろがりと深さである。
それは、「漕ごう、漕ごう、ボートを漕ごう。下流にむかって、ゆっくりと。楽しく、愉快に、楽しく、愉快に」と、歌われる。
人それぞれに「解釈」はあるだろうけれど、「life」という言葉が最後に出てくるように、これは<生きること>を、「ボートを漕ぐ」ことの表象に託しながら歌われていると、ぼくは解釈する。
うがってゆけばいろいろと解釈することはできるけれど、ここでは「3つのこと」に絞って、書いてみたい。
それは第一に、「生きる」ということが「漕ぐ」という「行為の繰り返し」に表象されているけれども、上流にすすむのではなく、「下流にむかって、ゆっくりと」すすんでゆく。
「川の流れ」に逆行するのではなく、<川の流れにのること>である。
生きることは、流れにのること、ゆっくりと漕ぐこと、漕ぎつづけること、そのような人生観が凝縮されている。
なお、下流に向かうということはいずれ「大海」に出るということであり、そのことだけでもいろいろな解釈ができる。
第二に、ボートを漕ぐことは「楽しく、愉快に、楽しく、愉快に」である。
英語ではただひとつの言葉、「merrily」である。
このことはさらなる解釈は必要ないであろう。
そして、第三に、「Life is but a dream」の世界観である。
少なくない人たちに影響を与えてきて言葉である。
社会学者の見田宗介も(おそらく)この民謡から、「Life is but a dream. dream is, but, a life.」という、自身の生きるという「旅」に響くリフレインを獲得したのだと思われる。
また、音楽家のジェイソン・ムラーズ(Jason Mraz)も、「Making It Up」という曲のなかに、この歌詞を繰り込んでいる。
「Life is but a dream」の「but」は、「only」の意味であり、「人生は夢でしかない」と、歌っている。
この言葉が最後に来るだけで、この歌詞ぜんたいが、その人生観・世界観をいっきにひろげ、深めているのだ。
この歌詞を口ずさむ子供たちが、はたして、どのようにこの最後の言葉を受け取っているのか、あるいは受け取っていないのかはわからない。
おそらく、ある程度「自然に」、意識化されずに、その言葉の<真実>が感じられ、生きられているのかもしれないと、ぼくは思ったりもする。
こうして、この歌詞を読むたびに、ぼくは、その人生観・世界観に心を動かされるのだ。
人生は夢でしかない。
けれども、見田宗介が語るように、その夢こそが人生である。
だから、ゆっくりと、川の流れにのって、下流へとボートを漕いでゆく。
楽しく、愉快に。。。