真木悠介先生の名著『気流の鳴る音』の
「概要と内容」を手短に述べることは
なかなか難しい。
理由は3つある。
- 要約を拒否する文体であること(ユニークな美しい文体)
- 削ぎ落とされた文体であること(徹底した論理)
- 一文一文がインスピレーションに充ちていること
真木悠介先生の言葉を拾えば、
『気流の鳴る音』とは、このようなことを
追求していく書である。
異世界の素材から、われわれの
未来のための構想力の翼を獲得すること…
われわれの生き方を構想し、
解き放ってゆく機縁として、これら
インディオの世界と出会うこと…
思想のひとつのスタイルの確立…
真木悠介『気流の鳴る音』(筑摩書房)
『気流の鳴る音』には、
「世界を止める」という章がある。
人が新しい生き方を獲得していく方法
である。
下記の水準において、「世界を止めて
いく」ことである。
- 言語性の水準
- 身体性の水準
- 行動の水準
- 「生き方」の総体
これまでの言語や身体の「すること」を
「しないこと」である。
言語であれば、これまでの思考を
やめてみる。
身体であれば、「目」に頼りすぎず、
五感で世界を感覚する。
ドイツ発祥の「ダイアログ・イン・
ザ・ダーク」の本質はここにある。
暗闇で食事を楽しむレストランなど
も、同様である。
『気流の鳴る音』では、インディオの
世界から、これらを追求していく。
ぼくたちは、世界への旅を、
世界の様々な異文化との出会いを、
「世界を止める」契機としていく
ことができる。
ぼくは、アジアへの旅のなかで、
シエラレオネで、東ティモールで、
香港で、幾度も幾度も、「世界を
止めること」を日常で繰り返す。
「生き方の発掘」(真木悠介)という
真木悠介先生の志に呼応するように。