「Live at…」の、すてきな<変換>。- 音楽バンド「Endless Summer」の企て「Music, Travel, Love」。 / by Jun Nakajima

🤳 by Jun Nakajima

 

音楽バンドの動画で、たとえば、「Stand BY Me(Live at…)」という題名を見たら、どう思いますか?「Live at…」と書かれていたら、「…で開催されたコンサート映像」だと思うのが、ふつうだろうと思います(今の時代、「ふつう」というのは使い方がむずかしいのだけど、あえて)。

少なくとも、ぼくは、このような題名だけを見た時に、「…で開催されたコンサート映像」というふうに、一方で思ったわけです。「コンサート」というからには、そこには、会場があり、バンドが存在して、聴衆がいる。そんなイメージがあるわけです。

けれども、「Perfect(Live from Gasparilla Island)」という題名を見ながら、どこか「違和感」を感じたのは、YouTube動画の静止イメージには、いわゆる「コンサート会場」があるのでもなく、聴衆の姿が見えるのでもなく、ただ、広大な自然を背景に、ギターを手にした二人が写っていたからです。

文字で読んで沸いたイメージと、動画の静止イメージが、ぼくの解釈系統において、スムーズにつながらない。でも、二人の歌い手、それからなによりも、二人の背後にひろがる広大な自然の美しさにひかれながら、ぼくは、YouTubeの動画を再生したのでした。

これが、「Endless Summer」というバンド(*注:のちに、バンド名を「Music Travel Love」に変更)との出逢いだったのですが、動画を再生してみて、「Live at…」の意味がわかり、ぼくは深く触発されたのでした。

彼ら二人は、世界を旅し、広大な自然(山も、湖も、花畑も)などを「舞台」にし、マイクスタンドを立て、ギターを手に、歌を歌うわけです。つまり、「Live at…」の「…」は、これら、世界のうつくしい場所だったわけです。

「会場」は、なにも、コンサート会場である必要もないし、また「聴衆」も、その場にいる必要はないわけです。こんなふうにして、カバー曲やオリジナル曲がYouTubeにアップされてゆくわけです。

● True Colours (Live at Singha Park)

● When You Say Nothing At All (Live in Nashville)

● Perfect (Live from Gasparilla Island) 

● I Will (Live at Glenwood Canyon)

などなど。

このような「企て」に触発されたわけですが、企てのエネルギーを支えているのは、やはり、二人の歌声です。どこかひかれる歌声なのです。

そこで、インターネットで彼ら「Endless Summer」(Music Travel Love)のホームページにとび、バンドの成り立ちなどを読んでいると、彼らが兄弟であり、1990年代に結成され人気を博したカナダのグループ「The Moffatts」のメンバーであった(ある)ことがわかったのです。

「The Moffatts」は人気のグループであったので、知る人は知っているだろうし、ぼくのようにグループ名を知らなくても曲は覚えている人もいるようなグループです。

4歳からプロフェッショナルとして歌いはじめ、5000を超えるライブパフォーマンスを重ねてきた経験が、「Endless Summer」の歌声に結晶してきたのだと、ホームページを読みながら、ぼくは勝手に想像します。

そして、うえで取り上げた曲群は、そんな彼ら、ボブとクリントがすすめるプロジェクト「Music, Travel, Love」に沿って、アップロードされている曲たちなのです。

彼らの歌声にひかれ、また「企て」も面白いのですが、でも、ぼくが、とりわけここで書いておきたいのは、この企てにおけるコンサートの「舞台」です。つまり、広大な自然のことなのです。

舞台である自然がとてもうつくしく撮影され、また魅力的に編集されている。それらを見ているだけで、気持ちがひらかれるのですが、でも、ぼくは、自然にひらかれた視点をふたたび、ボブとクリントの二人にもどしてみるのです。

彼らの歌声はもちろん彼らの歌声であるわけですが、彼らの歌声は、これらの自然から得るちからを<変換>させているのだと。ぼくにはどうしても、そう感じられるのです。

コンサート会場であればたくさんの聴衆から得るちからを変換させてパフォーマンスにつなげるのと同じに、「Endless Summer」の二人は、自然から得るちからを、歌声に<変換>させている。それが、伝わってくる。

そこに<うつくしさ>を、ぼくは感じます。