香港で、麺にさそわれて - 「車仔麺」にみる文化。 / by Jun Nakajima

香港の陽光にさそわれると、
今度は、香港の麺がぼくをさそった。

知る人ぞ知る「車仔麺」の有名店に足を運ぶ。
「車仔麺」の歴史は1950年代に遡ると言われ
昔の屋台麺である。
今でこそ、屋台ではないが、香港のいたる
ところで食すことができる。

広東語が話せない場合、「少し困難」なのは、
オーダーのプロセスである。
麺、スープ、具を、細かくオーダーするため
である。
「セット」のメニューもあるが、やはり細かく
選びたい。

ぼくは「単語発音+ジェスチャー」勝負の
広東語で、麺と具材をオーダーしていく。

具材は、肉のあらゆる部分、野菜、卵、
ソーセージなど多種多様である。

ぼくは、野菜を中心にまとめ、
卵焼きを添え、香港式のホットミルクティー
を頼んだ。

自分で頼みながら、香港の食文化の多様性に
改めて感心してしまう。

「車仔麺」は具材はありとあらゆるものが
取り入れられる。
ミルクティーと麺の取り合わせも、日本に
いたらしないだろうなと、客観的に考える。

張競氏の「中華料理の文化史」の一節が
その背景を語ってくれているようであった。


…まずいものが淘汰され、おいしいものだけ
が残る。食材も、調味料も、料理法も、
出自はどうであれ、料理をおいしくすること
ができれば、たえず取り入れられてきている。
この意味では中華料理は多くの異民族の料理
文化を取り入れた、いわば雑種の食文化である。

張競『中華料理の文化史』(ちくま新書)
 

ソーセージが入っても、麺がおいしくなれば
喜んで取り入れられていくわけである。
そして、この仮説にもうなってしまう。

 

現在、地球上のどこの国にも必ず中華料理が
あると言われている。世界のほとんどの国で
受け入れられ、誰が食べてもそれほど違和感
を感じさせないのは、やはりその雑種性の
ゆえであろう。

張競『中華料理の文化史』(ちくま新書)
 

日本はもちろんのこと、
東ティモールでも中華料理に助けられた。
ニュージーランドでも、そして西アフリカ
のシエラレオネ(最近歴史に
残る大きさの
ダイヤモンドが発掘されたコノ地区)でも、
中華料理はぼくとともにあった。

そして香港の多種多様なものを許容する文化
は、さらに雑種性をとりこんできているよう
にみえる。

グローバル化を考える文脈の中で、
食文化の接触と受容と変容は、話題に尽き
ないトピックである。