「7つの習慣」で知られる著作(『The 7 Habits of Highly Effective People』)をこの世に遺したスティーブン・コヴィー(Stephen R. Covey)は、「家族」のためにできることとして、また「家族」という集団においてリーダーシップを発揮する仕方として、「Family Mission Statement(家族のミッションステートメント)」をつくることを挙げている。
…If you were to ask me: “What is the one thing I could do that would have the greatest impact for good on my family?” I would simply answer: Work with your entire family to develop a family mission statement. …The single most important and far-reaching leadership activity that you will ever do in your family is to develop a family mission statement.
(…「私ができる一つのこととは何ですか?」と私が問われたら、私はシンプルに次のように応えるだろう。「家族全員と共に家族のミッションステートメントをつくること」であると。…家族においてあなたが行う、最も重要で広範囲にまで影響をおよぼすリーダーシップの活動のひとつは、家族のミッションステートメントをつくることである。)
Stephen R. Covey『How to Develop Your Family Mission Statement』Grand Harbor Press, 2013(※日本語訳はブログ著者)
「Family Mission Statement(家族のミッションステートメント)」は、「7つの習慣」における第二の習慣「Begin with the End in Mind(終わりを思い描くことから始める)」をベースにした、ミッションステートメントの家族への適用である。
家族の共通の目的やビジョンを「Family Mission Statement」として定めることで、家族をリードしてゆく。
ミッションステートメントの他にも呼び方はいろいろあるけれど、コヴィーが言うように「呼び方」が大切なわけではなく、家族のメンバーそれぞれが、家族とは何か、また家族運営のための価値観について、明確にしながらつくりあげていくことの共同の努力のうちに重要性が織りこまれている。
コヴィーは、ステートメントの内容と同様に、ステートメントをつくる過程の大切さを強調している。
「世界」の諸相が根本的な変遷をとげてきているなかで、個人はもとより、「家族」の置かれているところも、ますますチャレンジングな様相を呈している。
「家族」というものに託された価値観が、ある程度、社会のなかに共通の了解があった時代は過去のものとなっている。
そのようなところで「家族」を生きていくことは、チャレンジングでありながら、また、大きなチャンスでもある。
「家族」というものを、より自由な仕方でつくりあげてゆくことができる。
その際、「目指すべきところ」があることで、家族における生に方向を与え、世界の大きな変遷のなかでもその方向性に生きることの指針となり、また生きることの過程を豊饒なものとしていくことができる。
迷ったときに、道から大きく逸れてしまったときに、ミッションステートメントに戻ることができる。
なお、例として、コヴィー家族の「Family Mission Statement」は、以下の通りである。
Our mission statement reads like this:
The mission of our family is to create a nurturing place of faith, order, truth, love, happiness, and relaxation and to provide opportunity for each individual to become responsibly independent and effectively interdependent in order to serve worthy purposes in society.
(われわれのミッションステートメントは以下の通りである。
われわれ家族のミッションは、信仰、秩序、真実、愛、幸福、くつろぎを育む場所をつくること、また社会における価値ある目的を果たすために、それぞれが責任をもって自立し、効果的に相互依存する個人となる機会を提供することである。)
Stephen R. Covey『How to Develop Your Family Mission Statement』Grand Harbor Press, 2013(※日本語訳はブログ著者)
コヴィーの家族らしく、「7つの習慣」の全体像が、家族のミッションステートメントにまで組み込まれている。
よいミッションステートメントとして、コヴィーは4つのポイントを挙げている(※前掲書を参照)。
- 永久的なもの(timeless)
- 目的(目的地)と手段(目的地につく方法)双方にふれること
- 人生のすべての役割にふれること(家族生活の基本的な活動のすべてにふれること)
- 4つの性質(身体=生活すること、心=愛すること、マインド=学ぶこと、精神=レガシーを遺すこと)のすべてにふれること
つくる際にはこれらのポイントなどを参照していくことができるが、でも完璧なものをつくろうとするのではなく、まずはつくりはじめること。
その過程において、家族のメンバーそれぞれが、いろいろと考えたり、いろいろと見たり、いろいろと理解したりすることができる。
有効性を疑う前に、まずはやってみることである。