香港で、(食べずに)「月餅」を楽しむ方法。- 月餅の種類と売られ方に惹きよせられて。 / by Jun Nakajima


中秋節を明日10月4日に控え、ここ香港の街は「中秋節」の彩りが濃くなってきている。

中秋節の当日と、香港の祝日となる「中秋節の翌日」共に、天気のいたずらで月は見えないかもしれないが、街では「月餅」がいたるところで、いっぱいの「光」を放っている。

 

一年の行事の中で、旧正月と冬至と並んで大切にされる「中秋節」に「月餅」が彩りを添える。

月餅は、歴史や言い伝えなどがいろいろに語られるが、現代においては、家族などで一緒に食べることを楽しんだり、ギフトとしての役割も担っている。

甘い月餅はとても甘かったりするから、ぼくは例年、あまり食べないけれど、食べないなりに「月餅」を楽しんでいる。

ぼくが食べずに楽しむ方法は、秋の訪れを感じることの他に、月餅の種類を楽しみ、月餅の売られ方を観察し、そしてビジネスや社会を分析することである。

「甘み」も何もない方法だけれど、ぼくとしては<甘みのある楽しみ>の一つである。

 

まずは、月餅の「種類」である。

大きくは、甘系と塩系がある。

そこから、それぞれに数え切れないほどに、中身のバリエーションができていく。

中身のバリエーションも、ただ具を変えていくということにとどまらずに、例えば、下記のような広がりをつくっている。

● ブランド志向:ブランド名が刻印された月餅

● 健康志向:例えば「低糖」、保存料調整などの月餅

● モダン:アイス月餅、ドリアン入りの月餅など

● 月餅の「形」をしたスイーツ:月餅の形をした「チョコレート」など

● 月餅の「入れ物」の原型だけを残したもの:容器が月餅で中身は他のお菓子など

● 製造場所:「香港製造」に刻印が押された月餅

● その他

この10年を見てきても、香港における月餅のバリエーションの広がりには驚かされる。

 

月餅の「種類」に加えて、「売られ方」にも、いつも惹きつけられてしまう。

例えば、次のようなところである。

● 販売時期:いつ頃から売られ、いつ頃にピークを迎えるかなど

● ディスカウント(早割):早割価格が設定されていたりする

● ディスカウント(量):「何箱購入で、何箱フリー」的なディスカウント

● ディスカウント(その他):中秋節後のディスカウントなど

● 個別売り/箱売り:ひとつで購入できるか、箱での購入かなど

● 販売場所:店頭だけでなく、特設場所など

● その他

クーポンなどもあって、売られ方のバリエーションも広がりをもっている。

これらに加えて、プロモーションの仕方なども観察しながら、その売られ方に香港の凄さを見ることができる。

 

香港の街やショッピングモールを歩きながら、足を止めては、月餅の種類や売られ方を観察し、いろいろと考えることに、ぼくは楽しみを見つける。

コマーシャル化された中秋節の風景のひとつだと言われれば、そうだと言わざるを得ないけれど、そのような批評も飛び越えてゆくほどに、多種多様で多彩な月餅が「光」を放っている。

そして、ぼくは思う。

「中秋節」や「月餅」を大切にする人たちがいて、そこに深い「幸せ」を感じる人たちがいる。

表層的な形を変えても、そこに文化があって、人と人とのつながりがある。

そんなことを考えながら、明日中秋節には久しぶりに月餅を買って、(ひとつ丸ごとは食べられないから)妻と一緒に食べようかと、ぼくは思っている。