香港では、中堅くらい以上のレストランの多くは、「予約型」である。
人数に限らず、2名であっても、予約が必要であったりする。
香港に住むようになった当初は、この「予約」のシステムになかなか慣れなかった。
ちなみに日系の飲食店などはいろいろ柔軟にシステムをつくりあげているようだ。
香港における「予約型システム」と「会計を席上ですること」には、香港で暮らしていく上で慣れておく必要がある。
ぼくは今でも、完全に慣れたわけではないけれど、必要なときにはもちろん予約する。
そんなこんなで、今回も予約をしようと、携帯電話で電話をすることにした。
そのときの「電話対応」の話である。
電話対応における少しの差が、(ぼくへの)影響として大きな差になったことの話だ。
香港のあるホテル内にあるレストランを予約しようと、ぼくは電話をかける。
電話先は、この場合、レストランではなくホテルのカスタマーサービスだ。
電話取りは素早く、英語が先に来て、広東語が続く。
ぼくは英語で、「明日のディナーの席予約をお願いしたいのですが」と伝える。
即座に英語で、「すみません、席は予約で満席です」と返答をいただく。
「そうですか、ありがとうございます」とぼくは伝えて、お互いに電話をきる。
とても手際よく、コミュニケーションがなされる。
明るく自然で、別に悪い気はしない。
翌日、キャンセルがあるかもしれないと、ぼくは念のため、もう一度電話をかけてみることにした。
再度、素早い対応により、女性の声で、英語に続き、広東語が話される。
前回の方とは異なる人のようだ。
ぼくは前回と同じように、英語で、用件を伝える。
また同じように、即座に、「席が予約でいっぱいである」旨がぼくに伝えられることになる。
そこまではほぼ同じだったのだけれど、その後に、こんな内容がぼくに伝えられたのだ。
「先着順で外のテーブルについていただくことができますので、是非お越しください」と。
それから、外のテーブルが6テーブルあることも聞くことができた。
どちらも対応いただいた感じはよかったのだけれど、「先着順で…」の付け足しに、ぼくは心が動かされた。
それは次のように心を動かされたのである。
- 印象がまったく異なること
- 「行こうかな」と思うこと
- 行けなくても、次回やはり行こうと思うこと
第一に、やはり、印象がまったく違ったこと。
予約テーブルではないテーブルの存在を知ることと同時に、歓迎されているように感じたのだ。
それはぼくの側の視点から言葉を付け加えてくれたからでもある。
そうだからこそ、第二に、「行こうかな」と思うのである。
今回は、結局ぼくは行かなかったのだけれど、今回行かなくても「次回やはり行こうかな」と思う。
たった一文が付け加えられただけで、印象と風景ががらっと変わってしまったのだ。
後で考えてみると、「当たり前」のことを伝えられただけなのだろうけれど、その「当たり前」は全員ができるものではない。
むしろ少数派であるように思う。
また、香港でのぼくの経験に限って言えば、満席の場合は、「満席です」で通常は会話が終わってしまうことを思い起こすと、そこからの「一歩」は大きい。
30秒(x 2回)くらいの会話だったけれど、いい体験と学びの時間であった。