1996年、ニュージーランドの北端から、
南に向かって、ぼくは歩いていく。
10月10日、いよいよ、北端を出発する。
前日にキャンプサイトで出会った日本人、
大介さんに見送られる。
一歩一歩がゴールに向かっていると思うと
気持ちが高揚した。
つい、一歩一歩の歩みが早くなってしまう。
しかし、最初から、ルート探しに戸惑って
しまった。
道らしき道があるところもあれば、
また道しるべが不明確なところもある。
慣れないぼくは、間違った方向に歩んで
しまう。
最初から、1時間半も彷徨ってしまった。
ようやく、正確なルートに戻ったところで
マオリの家族に出会った。
父親と子供、そして子供の祖父の3名。
この辺りで、貝を採り、家に戻る途中だと
いう。
ぼくは、この後、90マイルビーチを下る
のだと説明する。
すると「食べ物はたくさん持っていますか?」
と言葉が返ってきた。
「一応、持ってきています。」と
ぼくは答える。
すると、貝で一杯になった袋から、
大きな貝を3つ取り出し、ぼくに差し出した
のだ。
ついでに、食べ方も教えてくれる。
彼らと別れ、Twilight Beachまで進む。
初日は、そこでテントを張った。
夕食には、頂いた貝をスープに入れて
食べた。
ニュージーランドを「歩くこと」には
一杯の物語が生まれていく。
夜中に起きたとき、夜空にひろがる星たちは
限りなくきれいであった。