「情報」を判定するための方法のひとつを、
ぼくは、経済学者アマルティア・センから学んだ。
ある情報が何を言おうとしているのか、何を主張
しようとしているのか。
経済学者アマルティア・センは、1998年に
ノーベル経済学賞を受賞した。
GDPなどの経済指標だけではない、人間開発の
代替的な指標(「潜在能力アプローチ」)を
提示するなど、理論においても実践においても
大きな影響を世界に与えてきた。
センは、アメリカの心理学者・哲学者であった
ウィリアム・ジェームズの著作『心理学原理』
(1890年)から、こんな言葉を拾い、論文の
中で引用している。
「賢明である技術(art)は、何を見落とす
べきかを知るという技術である。」
アマルティア・セン論文「権利と潜在能力」
(1984年)
センがこの言葉を引用する理由は、
「何が見落とされているかを評価することは
何が主張されているかを判定するのにまったく
よい方法であるから」である。
ある情報を手にしたとき、そこには何が
「見落とされているか」を見ること。
見えない言葉を拾うこと。
世界は、毎日、情報を発信し続けている。
メディアのニュースもそうだし、ブログも
そうである。
仕事の中での情報もそうだし、起きる問題も
そうである。
その中で、ぼくたちは様々な「情報」に
出会うことになる。
そんなときに、言われていること、主張され
ていることから目をはずし、「言われていな
いこと」をみる。
普段とは違う「見方」で情報を見る。
目の視点をズラすことで立体像が浮き上がる
3D画像のように。
センが言うように、見落とされているものは
何が主張されているかを判定するのに、
よい方法なのだ。
センは、この方法で、厚生経済学のある「不
可能性」を切りひらくことになった。
日々、世界は、主張でいっぱいだ。
そんなとき、そこで語られていない言葉に
耳をすますこと。
見えないものに目をこらすこと。
ぼくは、こんなことを、経済学者アマルティア・
センから学んだ。