日本に暮らし、アフリカに暮らし、
アジアに暮らす。
そんな中で、男女間の関係をあり方を
ぼくはいろいろと考えてきた。
(ここでの男女は、男性性と女性性
という広い見方である。)
頭ではわかっていたけれど、男女間の
関係性は、表面的に観ると様々であった。
しかし、現代の人間は「重層的」な存在
(生命性・人間性・文明性・近代性・
現代性を帯びる存在)である。
生命性・人間性が、誰にでも生き続けて
いる。
ぼくが思春期を迎えた1980年代の日本
では、「男女雇用機会均等法」が制定
されたときであった。
法律の制定は、社会の状況を反映する
ものである。
その社会状況の中で、ぼくはなぜか
「男女は(すべて)同じでなければ
ならない」的な考え方を、自分の思考
にはりめぐらしてしまっていた。
よく考えずに、言葉の表層と社会的な
雰囲気だけに、自分をあずけてしまっ
ていたのだ。
もちろん「同じ」がよいこともあれば
「違う」こともある。
この「勘違い」が、人との関係において
無数の問題をつくりだしてしまった。
そして、ぼくだけではない、世界の多く
の人たちが、「自分中心」(男性なら
男性、女性なら女性)で考え行動して
しまっているように、ぼくは思う。
だから、日々の関係の失敗から経験的に
は学びを得ても、根本的な対策には至ら
ない。
また、相手が変わることを要求してしまう。
黒川伊保子の著書『鈍感な男 理不尽な
女』(幻冬舎)は、黒川が「まえがき」で
冗談交じりで言うように、「ノーベル平和
賞をもらってもいいくらいの一冊」である。
ノーベル平和賞は大げさにしても、
何らかの「平和賞」が授与されてもよいと、
ぼくはちょっと本気で思ったりする。
本書は、2部から成っている。
●Part 1: 女性脳のトリセツ
~女の機嫌をなおす18の処方箋
●Part 2: 男性脳と女性脳はなぜこんなに違うのか
Part1は、「女たちの18の不機嫌」の
ケースをとりあげている。
そして、黒川がそれぞれに解説を加え、
処方箋(対処方法)を提案している。
最初のケースは、
「もう、いい。自分でする!」と突然
キレる、ケースだ。
誰しもが経験する状況だ。
黒川伊保子の視線は、どこまでも寛容だ。
黒川伊保子は「女の機嫌のなおし方」と
題した「まえがき」で、次のように
記述している。
女は、惚れた男にだけ、よく機嫌を
損ねる生き物である。
なのに男は、女の機嫌をとるのが苦手だ。
人に秀でた才覚がある男ほど、その傾向
は顕著である。脳の信号処理が、目の前
の女性の気分にチューニングするように
はできていないからだ。目の前の人の
思いに引きずられて動揺する人は、
世界観が作れない。
だから、彼女が少々嫌な顔をしても
気づかない。…女性の思いを察すること
は、本当に難しい。というわけで、女性
の機嫌のなおし方がとんとわからないの
は、男らしい男性の、正しい反応なので
ある。
つまり、愛のある女と、才覚のある男
のベストカップルほど、「女の機嫌」に
つまずくことになる。
で、この本の登場である。
黒川伊保子『鈍感な男 理不尽な女』
(幻冬舎)
この「まえがき」にぼくは気持ちが
救われた。
(別にぼくが人に秀でた才覚ある男
というわけではないけれど。)
この「世界中の男性の携帯辞書」(黒川)
は、日本語だけれど、世界中の男性が
読むべき本である。
そして、男性だけでなく、女性も一緒に
学び、日々関係を豊饒にしていくことで、
世界はきっと素敵になると、ぼくは思う。