香港に住むようになって、10年が
経過した。
住み始めた当初は「街の空間」の
印象は、次のようなものであった。
・高層ビルが多いこと
・密集していること
・雑多な空間であること
「高層ビル」は、オフィス用だけ
でなく、人々の住まいであるマン
ションも高層ビルが一面に続いて
いる。
香港は、東京都の半分ほどの面積
に、700万人以上が暮らしている。
まだ、今も、人口は増えていると
いう。
だから、「空間」は貴重である。
ビルは、横ではなく、上に向かっ
て伸びていく。
ぼくは、そんな空間に、暮らして
きた。
香港はアジア各地への「ハブ」的
な位置にあり、旅をする拠点とし
ては絶好の場所である。
2011年か2012年頃に、ぼくは、
初めて台湾に行った。
香港から1時間40分ほどのフライ
ト時間である。
空港から台北の街の中心に向かう
バスから、窓の外を眺めていた
ぼくは、「ひっかかり」を感じて
いた。
空が広いこと、街の空間が日本に
似ていたことも印象的ではあった
けれど、それだけではなかった。
「あっ」
と、ぼくは気づいた。
気づいたのは、
一軒家が多いことに。
高層ビルが香港に比べ少ないこと
を感じながら、その裏返しとして
「一軒家」が多いことに気づいた
のだ。
それは、ほっとする感覚をぼくに
与えたことを、今でも、覚えて
いる。
そんな「視点」をもちかえり、
ぼくは香港の街の空間をみてきた。
香港も、中心部を離れ、緑の木々
たちがいっぱいに広がる空間に
立ち入ると、風景が一変してくる。
高層ビルだけでなく、
「村」の風景が眼にはいってくる。
村にはコミュニティがある。
そして、そこには、昔ながらの
一軒家が連なっている。
そんな「街の路地裏」の迷宮に
はいる。
数十年前の風景が残っている。
店舗のつくりも、そこにかかる
看板も、そんな名残をいっぱい
に放っている。
そんな「街の路地裏」に身を投じ
ながら、ぼくは考える。
「街の空間」は、そこに住む人々
の心身の持ちように、大きく影響
を与えるだろうことを。
また、人と人との「関係性」に
影響するだろうことを。
香港は、今も各地で、高層ビルの
建設が盛んに行われている。
新しいマンションの敷地の中には
一軒家とマンション棟が兼在して
いたりするのを見る。
そんな風景を眼の前にしながら
香港の社会はどこに向かうのだろう
かと、勝手に思いをめぐらしている。