香港で、「酷暑警報」(Very Hot Weather Warning)に学んだこと。- 日本の「熱帯夜」との間(はざま)で。 / by Jun Nakajima

日本のニュースを見ていて、「熱帯夜」という言葉を見つける。

東京や関東地方の暑い夏の夜を思い出す。

「熱帯夜」というのは、気象庁の気象用語では「夜間の最低気温が25度以上のこと」とある。

ただし、統計種目ではないようで、インフォーマル的なものでもある。

「25度以上」というのは、海外に出て連続15年ほどになるぼくの記憶の中にも残っている。

「25度」は、海外に出てから最初の内は、意識的な基準のようなものとして、ぼくの中にあったことは確かだ。

だから、西アフリカのシエラレオネ、東ティモール、それから香港と、熱帯や亜熱帯のところに住みながら、最初は、なぜか「25度」と比較してしまうようなところがあった。

でも、そんな「25度」という意識的な基準も、海外に長く住んでいると、うすれていく。

ぼくの身体が、それぞれの環境の場に順応しながら、それなりの完結性を、その場その場でつくっていく。

香港は、今この時期、最低気温が26度とか27度である。

日本の数値基準でいけば、香港では、毎日が熱帯夜になってしまう。

ぼくの身体は恐らく、摂氏でいけば、5度くらい上の幅で、完結性をつくっている。

人間の身体の順応性には、やはり感銘を受ける。

 

「熱帯夜」という表現は香港には(もちろん)なく、代わりのものではないけれど、香港の気象庁ともいうべき香港天文台からの「天気の警報」がある。

警報により、活動や予防の注意をよびかけるわけだ。

暑さについては、英語で「Very Hot Weather Warning」、中国語で「酷熱天気警告」という警告が発出される。

「Very Hot Weather」とはそのままの表現だけれど、文字を見るととても暑そうだ。

日本語に訳すとすると「酷暑警報」だろうか。

香港天文台のホームページを見ていると、警報には明確な気温は決められていないようだ。

今朝は、早朝7時前に警報が発出され、そのときで27度くらいで、日中は33度くらいまで上がった。

また、暑さとは逆に、寒いときには、「Cold Weather Warning/酷寒天気警告」が発出されるが、それは10度を下がるあたりだ。

 

大切なことは、海外で生活していくことを、ぼくたちはこのようにして、これまでの(狭い)「世界」を相対化していくことの方法とすることができる。

日本にいるときは、本気では信じていなかったのだろうけれど、「25度」は意識的な基準として、ぼくのなかにずっしりと住んでいたのだ。

これは一例だけれど、そんなことが山ほどある。

海外で15年以上生活しながら、いまだに発見することがあるほどで、ぼくたちのマインドと身体に積み重なる「生活の地層」ともいうべきものは、何層にもわたっている。

「新しい価値観や生き方」と「古い価値観や生き方」が、これまで(の人間の歴史)に類を見ないほどに、重なって並存し、そして相克と相乗を繰り返していく時代にいる中で、ぼくたちはどれだけ順応性と柔軟性を高くもつことができるのかが問われてくる。

それは日本と海外という相対性だけではもちろんないけれど、「生き方の相対化」を生きていく経験は、ぼくたちの強い味方だ。

一度さまよいでた者は、どこまでもさまよいでることができる。

Very Hot Weather Warningが発出されている暑い香港で、そんなことを、ぼくは思う。