米国のシアトルで、「Amazon Go」が開店し、社員向けの試験段階から、いよいよ一般向けに開放された。
スマートフォンの専用アプリをゲートにかざして入店し、自由に商品を選び、レジを通らずに店舗を出て、自動的に清算される。
これまで描かれてきた「未来」が現実化していくのを見るのは、頭の中でわかっていたことだけれども、実際に映像で見ていると、わくわくすると共に、とても不思議な気持ちがする。
これからも、このような「現実」が、至るところでさまざまな仕方で現れていく。
田中道昭は、著書『アマゾンが描く2022年の世界:すべての業界を震撼させる「ベゾスの大戦略」』(PHP新書、2017年)の序章「2022年11月の近未来」で、「佐藤一郎さん(仮名)」の生活を通して近未来のイメージを描いている。
近未来の設定は、「アマゾン365」という無人コンビニエンスストア店舗のオープンカフェ。
「アマゾン365」は、アマゾンが2017年に買収した米国の高級スーパーマーケットであるホールフーズの一業態に、上述の無人店舗「Amazon Go」を融合させたものとして、描いている。
そこはシェアオフィスの機能も有し、フリーランスの佐藤一郎さんがそこで仕事をしているというイメージだ。
今回の「Amazon Go」は、「はじまり」にすぎない。
ビジネススクール教授である田中道昭は、前掲書で、アマゾンが描く「世界」を、さまざまなフレームワークを駆使しながら、わかりやすく解説してくれる。
田中が本の執筆で「こだわった点」に、ぼくはひかれる。
本書を執筆するにあたって、私が最もこだわった点のひとつは、アマゾンの経営者であるジェフ・ベゾスの生の声を聞くことでした。その会社を理解するためには、その会社の経営者のセルフリーダーシップとセルフマネジメントのあり方を理解することが極めて重要だからです。
田中道昭『アマゾンが描く2022年の世界:すべての業界を震撼させる「ベゾスの大戦略」』PHP新書、2017年
田中道昭は、ベゾスの人物像を理解するために、公開されている動画はすべて視聴し、引用されている発言、関連する学術論文や資料など、可能な限りに目を通す。
その節の見出しにあるように、「ジェフ・ベゾスの生の声」から未来を見ることである。
思えば、ぼくもジェフ・ベゾスの話す内容を、動画を通してじっくり視聴したことがなかったから、YouTubeでいくつかをひろって視聴する。
ジェフ・ベゾスの話す内容と話し方が、思った以上に、ぼくの思考の中にすんなりと入って来る。
特に、アマゾンが掲げる「顧客第一主義」「超長期思考」「イノベーションへの情熱」に関するベゾスの説明は、これらのつながりなどを含めて、ぼくの思考と理解を賦活してくれる。
そこに、ぼくが「顧客」として経験する「Customer Experience(カスタマー・エクスペリエンス)」をあわせながら、ぼくはアマゾンが描く「未来」を見ようとする。
今は毎日、アマゾンをいろいろな仕方で利用しているぼくは、どこに向かっているのだろうか。
田中道昭の分析する「アマゾンの大戦略」の図を見ながら、じっくりと考えてみようと、ぼくは思う。