ぼくの著作、Amazon Kindle電子書籍『香港でよりよく生きていくための52のこと』。
ぜひお手にとられて読んだいただきたく思う一方、「気長」にかんがえているようなところもある。
その理由のひとつは、「アマゾン+電子書籍」という組み合わせであるところであり、その土台としては「インターネットの世界」がある。
西野亮廣の著作『革命のファンファーレー現代のお金と広告』(新潮社、2017年)は、さまざまな視点と実践記録を提示してくれているが、そのなかに「インターネットが破壊したもの」という文章がある。
アマゾンと町の本屋さんとを比較しながら、インターネットによる「破壊と生成」の、つらなる断層を解説している。
結論的には、「インターネットが破壊したもの」は「物理的制約」であるという当たり前のことであるけれど、その視点を「本」というものに一歩すすめて、きりとっている(そして「創造的な実践」に西野はつなげていく)。
…町の本屋さんと違ってアマゾンは…“あまり売れない本”を本棚に並べておくことができる。取り扱っているものが物質ではなくデータだからだ。アマゾンの本棚は無限に続いている。…
たとえ、月に一冊しか売れないような本でも、それが数百万種あれば、月に数百万冊売れるわけで、チリも積もれば何とやらだ。…
アマゾンを支えているのは、まさかまさかの“あまり売れない本”だったわけだ。
西野亮廣『革命のファンファーレー現代のお金と広告』幻冬舎、2017年
そしてこの「数百万冊」は今もこうして、日々増えている。
数十年前に出版された英語書籍を読みたいと思った時に、ぼくはそれがKindle電子書籍で出ているかを確認する。
そのようにして見つけた古典的な良書を、ぼくは「ワン・クリック」で購入して、読むことができる。
この書籍にとって、「ワン・クリック」を得ることができるのは月に1回かもしれない。
でも、そのような本が数百万冊あって、世界のどこかで、だれかが「ワン・クリック」で購入している。
西野亮廣は、町の本屋さんが「20:80の法則」で動いていることを解説している。
仮に100冊の本を店に並べるとしたら、人気の上位20冊の売り上げが店の売り上げの80%を占めているという。
そうすると、本屋を支えているのは、“あまり売れない本”ではなく、上位20%の「売れ筋商品」となる。
残り80%の本は、限られた売り場面積を無駄にしてしまうので、版元に返本され、売れそうな本と取り替えられることになってしまう。
インターネットによる「破壊と生成」は、こうして、いろいろなことのルールや常識を変えていくことになる。
というわけで、「絶版」はぼく自身が決めないかぎりないし、大躍進中のアマゾン(そしてジェフ・ベゾス)を見ていると「アマゾンがつぶれること」もKindleの方針を大きく変えることも、今のところはない。
ちなみに、ぼくは「町の本屋さん」も、とても好きである。
売れ筋商品から世界の動きや人びとの関心をかんがえ、またあまり売れない「残り80%の本」のなかに、おもしろそうな本をみつける。
そのような出会いもある。
西野亮廣がいうように「インターネットが破壊したもの」は「(物理的)制約」である。
破壊された制約とその周辺から、新しく、いろいろなものが「生成」されてゆく。
「アマゾン+電子書籍」というプラットフォームは、このように、ぼくにとっての力強い味方だ。
こうして、ぼくの本は、(見渡すことのできる未来の時空間において)「アマゾンの本棚」にずっと陳列されることになる。