ある場所にそれなりに長く住んでいると、その場所の風景、またそこにあるものが「ふつう」のものとして、見えたり、感覚されるようになってしまうことがある。
ここ香港に11年住んでいて、毎日それでもいろいろなことを見つけたり、気づいたり、驚いたりすることはあるのだけれど、他方で「ふつう」のことのようになってしまっていることもある。
もちろん、ぼくたちが生きていくうえでは、生活における多くのことやものを「ふつう」のこと(=日常)とすることで、ぼくたちの生活は成り立っていく部分がある。
つまり、あるAのことを「ふつう」としていくことで、例えば、あるBのことへと関心を注ぐことができたりする。
そんなとき、あるAのことを、「新鮮なもの」として、あるいは「違った視点」から感じさせてくれる人たちがいる。
それは、例えば、旅人たちである。
ぼくたちは、旅人たちの「視点」で、ある場所での長い生活で「ふつう」のこととなってしまっているようなことにも、新鮮な風景を見ることができる。
日本に長く住んでいれば、海外から旅行でくる人たちの「視点」で、ぼくたちは、新たな/新鮮な視点で、「ふつう」のことに光をあてることができる。
同じように、ここ香港に住みながら、ときおり訪れる旅人たち/訪問者たちの「視点」で、ぼくは「香港」の生活の驚きや感動への<光>を手にすることができる。
コピーライター糸井重里のウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」の企画のなかに、食いしん坊トリオ「カロリーメイツ」の食べ歩きの旅があり、ちょうどこのブログを書いている日にも重なる、2018年4月23日から25日までの2泊3日において、「カロリーメイツ」は、「香港の旅」に来ている。
特設サイトの冒頭には、次のように書かれている。
「ほぼ日」の食いしん坊トリオ「カロリーメイツ」(シブヤ、スガノ、タナカ)は、これまでさまざまな場所で「食べ歩き」をしてきましたが、「どこか行き忘れている場所がある‥‥。それはもしかして香港じゃない?!」と勝手に気がついて、このたび香港に行くことにしました。みなさまに教えていただきながら、香港のおいしいマップを作ることが目標。2泊3日のウキウキの旅に、いってきまーす!
こうして「香港のおいしいマップ」を作ることが目標として掲げられ、滞在期間中は、リアルタイム中継で、香港での「食べ歩き」風景がレポートされることになる。
ぼくが心を動かされたのは、この「ウキウキ」感であり、また、目標からはずれるけれど、カロリーメイツのお三方の感動がレポートを通じてあふれでており、その感動と視点が、ぼくにとっては日常である「香港」を、まるで新鮮な風景のようなものとして見せてくれることにある。
このようにして、ぼくたちは、<他者>を通じて、普段の日常の風景に、新鮮な風をふきこむことができる。
また、香港に住む(ぼくのような)人にとっても、「香港のおいしいマップ」のようなものは、いくつかのパターンを含め、持っておきたい。
著書『香港でよりよく生きていくための52のこと』(2018年)のなかで、ぼくは、その16番目に「「なんでもある香港」を堪能する」という項目を置いた。
香港は「なんでもある」場所である。
その楽しみ方の切り取り方もさまざまであり、観光で訪れる方などを案内する際に、(少なくとも)いくつかの「ルート」を持っておくことを、すすめている。
だから、「香港のおいしいマップ」は、観光で香港に行く人たちだけではなく、ぼくのように香港に住む人たちにも役に立つものである。
ところで、こんなことをかんがえていたら、カロリーメイツの香港の旅2日目において、カロリーメイツが2018年10月末で解散することが報告された。
なにはともあれ、感謝の気持ちを伝えると共に、香港の3日目最終日を楽しんでいただきたいと思う。