昨年2018年にリリースされた、Yoko Ono(ヨーコ・オノ)のアルバム『Warzone(ウォーゾーン)』。生誕85周年、またミュージシャンとしての50周年にあわせて発表されたアルバムである。
収録曲は13曲。1970年から2009年までのヨーコ・オノの作品から選曲され、新たに収録されている。
13曲目には、あの、ジョン・レノンの「Imagine」が収められている。2017年に、作詞・作曲のクレジットに「Yoko Ono」が追加された曲でもある。背景としては、ジョン・レノンが生前、歌詞やコンセプトへの、ヨーコ・オノのかかわりを認めていたことがある。
正直、ぼくがこのアルバムを聴いてみようと思った理由のひとつに、この「Imagine」があったことがある。ヨーコ・オノがどのように「Imagine」を歌うのか。それを確かめてみたかった。
ヨーコ・オノの曲や歌声は「普通」ではない。ミュージシャンそれぞれにユニークさを持っているという次元ではなく、そもそもの次元において異なっている(ように聞こえる)。
はじめて聴く人のなかには、ただの語りや叫びのように聞こえるかもしれないし、ずっと聴くに耐えないという人もいるかもしれない。確かに、「うまい」と言えるような歌声ではない。街角の静かなカフェではながれていないだろう。カフェでながれてきたら、びっくりしてしまう曲たちもある。
ビートルズも、ジョン・レノンをよく聴いてきたぼくでさえも、ヨーコ・オノを尊敬しながらも、彼女の曲たちをすすんで聴こうとはあまり思わなかったのが正直なところである。
けれども、ぼくがそれなりに歳と経験を重ねてゆくなかで、ヨーコ・オノの曲たち、とりわけ彼女の声音が自分の心に響いてくるのを感じるから不思議なものである。どんなふうにしてなのかは、ぼくにはよくわからないけれど。
アルバムに収められた「I Love All of Me」や「I Love You Earth」はどこか遠い世界からのことづてのように、聴く者に届けらるかのようだ。
それから、アルバムの最後に収められている「Imagine」の新バージョン。
「この曲をやるのは怖かった」と、ヨーコ・オノは語る。
「この曲をやるのは怖かった。トム(プロデューサーのトーマス・バートレット)も少し怖がっていたんじゃないかと思います。世界中の人が知っている曲ですから。でも、今回のアルバムのテーマに合うと思ったから、やるべきだと決心しました」
聴き方は、聴く人それぞれによるものである。
でも、少なくともぼくの耳には、ヨーコ・オノの声音が「届いた」のだと言える。そこに聞こえる声音だけでなく、まるでその声音を超える仕方で<音>がひろがってゆくのを感じながら。