なにはともあれ、1996年、ぼくは、ニュージーランドで
徒歩縦断を目指して、歩くことにした。
オークランドを出て北端に向かう。
北端に行くことから、すでに困難の連続であった。
また、北端といっても、北端周辺に何かがあるわけでもなく、
ぼくは道らしき道のない田舎道を歩いて、北上することになる。
「歩くこと」は、ただ歩くのではないという事実も、
身にしみて知ることになる。
背中には18キロ程の荷物を背負うのだ。
この重さには、さすがに、まいってしまった。
さて、北端のポイント、レインガ岬に到着する。
そこから、ぼくは、海沿いのルートを選択。
「90マイルビーチ」と呼ばれ、海岸線が延々と続くルートである。
誰もいないビーチで、海の光景も絶景である。
しかし、背中の荷物が、ぼくにのしかかり、途中からは
自分との闘いになってしまう。
ビーチを堪能する余裕はなくなってしまう。
特に、水が重い。
ビーチのどこにも、水道はない。
だから、節約しながら、ぼくは水を飲む。
歩いても歩いてもビーチが続く。
夜はビーチから内陸に入る境界線あたりでテントを張る。
ここなら、波はやってこないことを確認する。
内陸から水がちょろちょろと流れ出ている箇所を見つけ、
ぼくは、安堵と共に、その水を採取して夕御飯をつくる。
また、明日も、ビーチを延々と歩くのだ。
まずは休養をきっちりと取っておこう。
ぼくは、海岸線に鳴り響く波の音を耳にしながら、
眠りにおちる。
(続く)