21世紀最初の独立国(2002年に独立)、東ティモール。
ぼくは2003年の半ば頃から2007年初頭にかけて、NGO職員として東ティモールに駐在し、コーヒー生産者たちの支援に携わっていた。
香港に来る前に住んでいた国である。
この2017年7月に議会選が行われ、第1党となった東ティモール独立革命戦線(フレティリン)。
9月15日に、フレティリンのマリ・アルカティリ書記長が新首相に就任した。
マリ・アルカティリ新首相は、東ティモール独立後の初代首相であった人物である。
インドネシアによる占領時には、モザンビークにうつり、東ティモール独立のための外交に力を注いだ。
東ティモール独立に際し、東ティモールに戻り、シャナナ・グスマン大統領のもと、初代首相となる。
2006年、東ティモールの騒乱時に、辞任要求が高まる中で、辞任している。
ぼくが東ティモールにいる間、イベントなどでアルカティリ首相(当時)を目にすることは時々あった。
直接お会いしたのは、確か、2005年のことであったと思う。
アルカティリ首相(当時)は、地方を回っていて、ぼくがコーヒー生産者支援に携わっていたエルメラ県レテフォホも、スケジュールに入っていたのだ。
一通りのセレモニーが終わったあたりに、ぼくは1~2分ほどだったと記憶しているけれど、主に仕事のためにコーヒー生産者支援などのお話をさせていただいた。
エレベータに居合わせる30秒程度で自分の話を伝えるという「エレーベータトーク」のように、ぼくは短い時間で伝える準備をした。
東ティモールの公用語であるテトゥン語でお話をさせていただいたようにも記憶しているけれど、定かではない。
英語も混じったかもしれない。
話の内容も明確には覚えていないけれど、そこで感じられた空気感、それからアルカティリ首相の鋭い眼光、その中で緊張した声で一生懸命話そうとするぼく自身の姿が、今でも思い起こされる。
鋭い眼光と発せられる言葉のどっしりとした響きに、一国の舵取りにおいて決断・判断をしてきた人の強さと重さを、ぼくは感じた。
その時の「感覚」は、今でも、この身体に残っている。
独特の雰囲気と空気感があったからだと思う。
経験というものの「直接性」から生まれる記憶である。
2017年9月に新首相となったアルカティリ氏のニュースを見ながら、ぼくの中には、当時の記憶が、感覚と共に湧き上がってくる。
ぼくは、このような経験の積み重ねの中に生きてきたことを思う。
東ティモールの人物の記憶で言えば、もちろん、初代大統領のシャナナ・グスマン氏の印象は大きい。
直接にはお会いする機会はなかったけれど、時折、間近に目にすることがあった。
初代大統領であったシャナナ・グスマン氏については、また別の機会に書きたいと思う。