「夢中で仕事をしているときは…」(相田みつを)。- 仕事、本当の自分、しあわせ、のこと。 / by Jun Nakajima

詩人であり書家の相田みつを(1924-1991)。


夢中で
仕事をしている
ときは自分を
忘れる
自分を忘れて
いるときの自分が
本当の自分で
一番充実して
しあわせなときだ

みつを

「相田みつを美術館」ポストカードより

相田みつをの詩は、そのことばは、すーっと、じぶんのからだにはいってくる。そんなふうに感じることができる。

東京の「相田みつを美術館」で購入したポストカードのことばは、厳選されたことばたちである。

ただのポストカードといえばポストカードなのだけれども、それを手にとり、触れながら読んでいると、じぶんの内側から力が湧いてくるような感覚を得る。

手元に8枚ほどあるポストカードはどれも、それを手にするときそれぞれの心境によって、心に響くその響きかたが変わってくる。


昨日手にとって「響いた」ことばのうちのひとつが、冒頭のことばである。

相田みつをが書くことば(文字)にときおり見られる「力強さ」や「揺れ」などは特段みられず、どの文字も比較的整い、どこか淡々と書かれている(ように見える)。

でもそのことがかえって、ここで語られることをいっそう浮かびあがらせているようだ。自分を忘れる夢中であるさまが、書かれる文字に現れている。


そのような書かれることばのなかに、「仕事」のこと、「本当の自分」のこと、それから「しあわせ」のことの核心が、深くもりこまれている。

これだけのことばのなかに、これらの<核心>が、絶妙な仕方で凝縮されている。

そして、これら、仕事、本当の自分、しあわせをつらぬく芯は、<夢中である>こと、つまり<自分を忘れる>ことである。

あるひとは首をかしげるかもしれない。「自分を忘れているときの自分が本当の自分」とは、状況が逆さではないか、と。「本当の自分」とは、自分を忘れる仕方とは逆に、自分という主体を明確に形づくったとき、あるいは自分を明確に見つけたときなどの「自分」ではないかと思いながら。

ぼくは、相田みつをのことばに深く共感する。「自分を忘れているときの自分が本当の自分」であり、「一番充実してしあわせなとき」であることに。