旧正月(2月5日)以降、20度前後の、暖かく、過ごしやすい日がつづいていた香港。
ここ2日ほど、少し気温がさがっている。それでも15度から19度くらいで、「これくらいはなんでもない」と思っていたら、体の節々がいたくなって、これは「風邪のひきはじめ」かもと、初期段階における「対応モード」にはいる。
風邪は「敵」ではなく、身体の「祝祭」である、というような意味合いのことを、整体の野口晴哉は語っていたと思うけれど、ぼくの身体は「祝祭」を奏でているのだと、つまり、祭りのようにいったん秩序をこわし、新たな息吹をいれながら秩序を再構成しているのだと解釈する。
そんなわけで、「祝祭」が粛々ととりおこなわれるようにと、体を休ませようと思い、今回は、「感冒茶」を買って、飲むことにする。
「感冒茶」は、その名のとおり、「感冒」(風邪)の症状に効果を発揮する漢方茶・ハーブ茶である。
香港の街角では、このような飲み物を売っているお店にときどきでくわすのだけれど、飲みたいと思うときにはお店が近くになかったり、どこにあるか覚えていなかったりする。
このような昔からつづいているようなお店の店頭では、その場でお椀や紙コップで飲むこともできたり、あるいはテイクアウト用にペットボトルのものを購入することもできる。
そんな粋なお店とはべつに、モダンでおしゃれなお店もあり、駅の改札近くにならぶ売店のひとつとして出店している。
今回は、駅の改札近くにならんでいる「Hung Fook Tong」で感冒茶を買うことにする。以前、すでに試しているから、大丈夫だ。
感冒茶はさまざまなハーブなどからつくられているから、他のお茶や飲み物に比べ、少し高めである(Hung Fook Tongでは46香港ドル≒約650円)。500mlのペットボトルにはいっていて、購入時に温めてもらう。
「2回に分けて飲むのよ。あいだに4時間空けること。飲む前には何か食べるのよ」と、店員さんが、代わる代わる伝えてくれる。
お昼ご飯を食べ終わっていたから、ぼくは家に帰って、1回目の一杯を飲む。苦いのだけれど、ぼくは、このような漢方茶の苦さが好きなので、とくに苦にならない。さらに、このお店の感冒茶は少し砂糖が入っていて、飲みやすくしてあるようだ。
やがて身体に心地よさがやってきて(やってきたようで)、ぼくは横になって、眠ることにする。
だいぶ眠って起きて、夕食をとり、2回目の一杯を飲んでから、ぼくはこの文章を書いている。体の節々のいたみが残りながらも、だいぶ、体が楽になったように感じる。
書きながら、思い出す。海外で旅したり、暮らしているときに、体の不調が起きたら、その土地の「対処法」を活用すること。
アジアを旅していたときにお腹をこわして、ぼくは日本から持っていった薬ではなく、その土地で購入した薬を試したことを思い出す。西アフリカのシエラレオネに赴任し、最初のほうにしたことのひとつも、マラリアの治療薬を調達することであったことを思い出す。
その土地での「対処法」、その土地で手にすることのできる薬、それから漢方茶など、それらがそこに存在しているという存在理由が、やはりあるのだ。
なにはともあれ、朝からお昼にかけて、「今日のブログ書けるかな」と思ったのだけれど、感冒茶を飲んで、寝て起きたら、ブログを書くことができた。店員さんの「指示」にしたがい、2回に分けて感冒茶を飲み干したぼくは、そんなことを思いながら、ふたたび体を横にして、休もうと思う。