人生は、40歳にはじまる。- ジョン・レノンの曲「Life Begins at 40」。 / by Jun Nakajima

「Life Begins at 40」。人生は、40歳にはじまる。

「Life Begins at 40」は、ジョン・レノンが、1980年、40歳になった年に創られた曲である。同じ年に40歳になったリンゴ・スターのアルバムに収録を意図して創られたようである(参照:Wikipedia「Life Begins at 40(song)」)。

けれども、同年12月8日、ジョン・レノンは銃弾に倒れる。こうして、もともとの計画は頓挫してしまったのだけれど、後年、「Life Begins at 40」のデモ版が収められたCDが発売されて、ぼくたちが聞けるようになった。

メトロノームが鳴り響くなか、「…ダコタのカントリー・ウェスタン倶楽部にようこそ」という、ジョン・レノンの語りからはじまるデモ版である。

その言葉に見られるように、カントリー風の曲調で曲がはじまり、どこか悠長な響きで、ジョン・レノンは歌いはじめる。


They say life begins at forty,
Age is just a state of mind.
If all that’s true,
You know, that I’ve been dead for thirty-nine.

John Lennon「Life Begins at 40」(Lennon Music, EMI Blackwood Music Inc. OBO LENONO Music)


人生は40歳にはじまるのだという。年齢はただのマインドの状態にすぎないんだと。もしそれがほんとうだというのなら、ぼくは39年のあいだ、機能停止して死んでいたも同然だ。

シリアスな感じではなく、ゆっくりとしたカントリー音楽の曲調にあわせて、「あらまあ」という感覚で歌われている。それはたしかに、リンゴ・スターの楽観性にあわせられているかのようでもある。


それにしても、「Life Begins at 40」という見方(パースペクティブ)が、ぼくは好きである。人生は、40歳にはじまる。

ジョン・レノンは「年齢はただのマインドの状態にすぎない」と歌ったけれど、「人生は40歳にはじまる」こと自体が、マインド、心の持ちようであるとも言える。

そのことを確認したうえでなお、「人生は40歳にはじまる」のだということが、ぼくにとってはまるで「真実」のように感じとられるのである。40代の半ばにさしかかって、ぼくはいっそう、そのように思う。

でも、誤解しないでほしい。40歳だけが「人生のはじまるとき」ではない。どんなときも、「はじまり」とすることができる。人が描く「物語」というものは、いろいろに描くことができるのだ。

けれども、さらにこのことを再確認したうえでなお、「40歳」頃、いわゆる「中年期」というのは、人生の「転換期」であると、ぼくは自分の経験から感じるのである(例外がいくらでもあることを、念のため強調しておく)。それも、とても「深い」転換期である。

なお、「人生100年時代」の到来のなかで、おそらく、「中年期」という時期の捉え方も変わってゆくと思う。けれども、捉え方が変わったとしても、人生の「転換期」であることは変わらないだろうと思う。


「Life Begins at 40」を歌ったジョン・レノンは、人生の「このとき」をどのように捉えていたのだろうか。何を感じていたのだろうか。何を思い、この先をどのように描いていたのだろうか(あるいは描いていなかったのだろうか)。

この曲を聴きながら、ついつい、そんなことを想像し、考えてしまう。