社会構想

「世界を止める」(真木悠介)- 生き方を構想するために。 by Jun Nakajima

真木悠介先生の名著『気流の鳴る音』の
「概要と内容」を手短に述べることは
なかなか難しい。

理由は3つある。

  1. 要約を拒否する文体であること(ユニークな美しい文体)
  2. 削ぎ落とされた文体であること(徹底した論理)
  3. 一文一文がインスピレーションに充ちていること

真木悠介先生の言葉を拾えば、
『気流の鳴る音』とは、このようなことを
追求していく書である。


異世界の素材から、われわれの
未来のための構想力の翼を獲得すること…

われわれの生き方を構想し、
解き放ってゆく機縁として、これら
インディオの世界と出会うこと…

思想のひとつのスタイルの確立…

真木悠介『気流の鳴る音』(筑摩書房)


『気流の鳴る音』には、
「世界を止める」という章がある。

人が新しい生き方を獲得していく方法
である。

下記の水準において、「世界を止めて
いく」ことである。

  1. 言語性の水準
  2. 身体性の水準
  3. 行動の水準
  4. 「生き方」の総体

これまでの言語や身体の「すること」を
「しないこと」である。

言語であれば、これまでの思考を
やめてみる。

身体であれば、「目」に頼りすぎず、
五感で世界を感覚する。
ドイツ発祥の「ダイアログ・イン・
ザ・ダーク」の本質はここにある。
暗闇で食事を楽しむレストランなど
も、同様である。

『気流の鳴る音』では、インディオの
世界から、これらを追求していく。

ぼくたちは、世界への旅を、
世界の様々な異文化との出会いを、
「世界を止める」契機としていく
ことができる。

ぼくは、アジアへの旅のなかで、
シエラレオネで、東ティモールで、
香港で、幾度も幾度も、「世界を
止めること」を日常で繰り返す。

「生き方の発掘」(真木悠介)という
真木悠介先生の志に呼応するように。

「根をもつことと翼をもつこと」(真木悠介) by Jun Nakajima

真木悠介先生の分類の仕様のない
名著『気流の鳴る音 交響するコミューン』。
美しい本である。

その「結」にあたる章は、
「根をもつことと翼をもつこと」
と題されている。

人間の根源的な欲求は、
・根をもつことの欲求
・翼をもつことの欲求
であるという。

「翼」をひろげ、グローバルに、世界で
生きていきながら、
ぼくも「根」をもちたい欲求にかられる
こともある。

人は、家族やふるさとやコミュニティに
「根」をもとめる。
ぼくは「根なし草」になってしまうのでは
ないかという恐れも、以前はもっていた。

そんなときに出会った思想である。


<根をもつことと翼をもつこと>を
ひとつのものとする道はある。
それは全世界をふるさととすることだ。

真木悠介『気流の鳴る音』(筑摩書房)


この美しい文章は、20代のぼくから、
悩みと葛藤と不安と恐怖を、シンプルに
解き放ってくれたのだ。

東京で、西アフリカのシエラレオネで、
それから東ティモールと香港と続く
「人生の旅」において、『気流の鳴る音』
は、ぼくの旅の同伴者である。

1977年に発刊された『気流の鳴る音』
(初稿は1976年)は、今でも、そして
今だからこそ、尽きることのない
インスピレーションを、ぼくに与えて
くれる。

100年時代の生き方:書籍「ライフ・シフト」 by Jun Nakajima

これからの時代を生きていく上での「必読書」の
一つとしては、下記を挙げておきたい。

『The 100-Year Life: Living and Working
in an Age of Longevity』
By Lynda Gratton & Andrew Scott

日本語訳『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』

日本でもベストセラーとなっている書籍。

自分が100歳まで生きるとしたら?

という地点から、自分の人生を見直していく。

本書は豊富な統計データやシミュレーションも
提示しながら、100年時代の人生を展開している。

この本を読みながら、「人生80年」という錯覚を
自分がなんとなくもっていたことに気づく。
ぼくは一生涯働き続けるつもりだけれど、
人生80年と人生100年では、やはり戦略が
異なってくる。

「定年」ということで考えるべきことも、
様々に変わってくる。

ぼくが住んでいる香港でも「定年」は
大きなトピックだ。

香港では雇用関連法では「定年年齢」は
定められていない。
会社が任意で決めていくことができる。
あるいは、決めないでおくこともできる。
その中で、60歳なのか、65歳なのか、
などの議論が起きてくる。

しかし、「人生100年」の視点からは、
この議論は色褪せてくる。
当面は、現状に対処するため、定年と
それにまつわる施策は必要だけれども、
同時に、「人生100年」から考える
制度や施策も議論していく必要がある。

人生100年。

人生80年視点では人生の後半戦のぼくは
人生100年視点ではまだ前半戦。

後半戦に向かうまでの10年で、
ぼくは後半戦を楽しむ戦略と土台を
打ち建てる。

旅行で日本を訪問した人たちから。ー「道案内」という光 by Jun Nakajima

日本に旅行で訪れた人たちと話す。
日本での経験談を聞く。

しばしば耳にするのは、この二つである。

①日本は(道など)「きれい」である。
②日本人は「親切」である。

日本人は親切である、ということの経験は、
「道案内」を受ける経験からだ。

道に迷う外国の人たちが、道を尋ねる。
そうすると、丁寧に道案内を受ける。
時には、夜遅いからと車でおくってくれるなどの
経験をする。
遠くまで、一緒に歩いて、教えてくれる。

このような経験が、日本・日本人の印象をつくる。
これは、ぼくたちが想像する以上に、深い印象を残す。

「道案内」ということが、道に迷う人たちに
「光」を与える。

迷っているという暗闇への光。

「日本人」というイメージへの光。

そして、人間性への光。

この小さなことの積み重ねが世界をつくる。

世界を変える?(理論編) by Jun Nakajima

「世界を変える」ではなく、世界が変わっていく。

「~すべき」「~あるべき」という肩肘張った説法ではなく、また様々な形で発現する「暴力」という仕方でもなく、世界が変わっていく。

「生き方の魅力性」(見田宗介)という魅力的な仕方で、世界が拓かれていく。
魅力的な生き方に、人が変わっていく。

ある人が変わることで、人と人との「関係性」も変わっていく。
人と人との「関係性」は、「社会」である。
「社会」の連鎖が、「世界」である。

「生き方の魅力性」と「生き方の魅力性」が、相乗的に、拡がっていく。
そんな生き方ができる時代にぼくたちはいる。