外国語を勉強してきて、
外国語を駆使し、ぼくは
日本以外のところで生活してきた。
「きっと将来役にたつ」との確信の
もとに、英語にフォーカスし、勉強してきた。
外国語学習ということで、
誰か「モデル」となる人がいたかと
いうと、なかなか思い出せない。
鮮烈な「モデル」は、人の人生を
大きく変えていく力をもつことがある。
覚えているのは、
『古代への情熱』(岩波文庫)の
シュリーマンである。
シュリーマンは、19世紀に生きた
人物である。
トロヤ戦争の物語から、トロヤの
古都が必ず存在したことを信じる。
そして、数々の困難を乗り越えて
トロヤ遺跡を発見した人物である。
ぼくは、学校の「課題図書」で
この『古代への情熱』を読むことに
なった。
副題にあるように「シュリーマン自伝」
である。
トロヤ遺跡に辿りつくまでの「情熱」に
も、ぼくは心を動かされた。
しかし、彼の語学に対する「情熱」も
また、ぼくの脳裏に鮮明に焼きついたのだ。
彼の言語習得の「一方法」は次の通りである。
● 非常に多く音読すること
● 翻訳しないこと
● 毎日1時間をあてること
● 興味ある対象について作文すること
● この作文を教師の指導によって訂正すること
● 前日直されたものを暗記して、つぎの時間に暗誦すること
(『古代への情熱』岩波文庫より)
「あとがき」にあるように、
シュリーマンはその後15ヶ国語を
話したり書いたりするようになったという。
ぼくのイメージには、
この圧倒的な語学力をもつシュリーマンが
存在している。
その後のぼくの人生で、15ヶ国語が
できるようになったわけではない。
でも、シュリーマンの「生き方」は、
ぼくに、夢や勉学の情熱と人間の可能性を
教えてくれたように、思う。
学校の「課題図書」は、その当時は
できれば避けたいものであったけれど、
シュリーマンやヘルマン・ヘッセなど、
その後のぼくの人生に影響を与えてきた
ことを、25年ほど経ってから、ぼくは思う。