「人はなぜ塔をたてるのか」(辺見庸)。- 塔・タワーやピラミッドや巨大な遺跡の「表現」。 by Jun Nakajima

人はなぜ塔をたてるのか。辺見庸が2008年から2011年に書いた連載をひとつの本にした著書『水の透視画法』(集英社文庫、2013年)のなかに収められている短い文章のタイトル(「人はなぜ塔をたてるのか その身、低くあれ」)だ。

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海外をつなぐ「ビデオ通話」のこと。- 手紙とポストカードのノルタルジアとともに。 by Jun Nakajima

1990年代に、アジアを旅したり、ニュージーランドに住んでいたりしたときには、まだ、ビデオ通話はなかった(方法はあったかもしれないけれど一般的ではなかった)。もちろん国際電話はできたのだけれど、それなりにお金もかかるし、余程の急ぎの件がなければ国際電話はしなかった。

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火星の「音」を聴く。- NASA探査機「InSight」がとらえた「風の音」。 by Jun Nakajima

先月(2018年11月)の末に、火星に見事に着陸した、NASAの探査機「InSight」(インサイト)。

12月1日、着陸後に探査機「InSight」からひろげられたソーラーパネルを吹き抜ける風による振動を、探査機が探知したようだ。

はじめて聴くことのできる、火星の「音」(Sounds of Mars)。耳で直接に聴く音ではないにしろ、はじめて聴く、火星の「風の音」。

火星の「音」(Sounds of Mars)、「風の音」という文字を目にしながら、ぼくはふと、とてもシンプルなことに気づく。確かに、火星はこれまで、目で<見る>対象であった。探査機がとらえた火星の表情を目で見る(たとえば、探査機「Curiosity」がとらえた火星の地表をきれいな画像で見ることができる)。思えば、<聴く>ということはなかった。


その、火星の「音」を<聴く>という体験を、今回NASAは<共有>してくれている。つまり、一般公開し、ぼくたちは、火星の「風の音」(振動)を聴くことができるのだ。

ここでは、YouTubeへのリンクを貼っておきたい(下記をクリックするとYouTubeにとびます)。


「Sounds of Mars: NASA’s InSight Senses Martian Wind」(by NASA Jet Propulsion Laboratory)


動画を再生する前には「ヘッドホン」を装着しておくことを、おすすめする。NASAは、音のピッチによって3つのバージョンを用意してくれていて、最初のバージョンは、ヘッドフォンがないと聞こえないくらい低いピッチであるからだ。そしてなによりも、より親密に、火星の「風の音」を聴くために。


火星の「風の音」に耳を澄ませていると、想像の世界の扉がひらかれてゆく。この音がなんの音か知らされないままに聴いたとしたら、ただのなんでもない風の音だと思うだろう。けれども、そこに、火星の「風の音」ということが加わると、やはり想像の世界がひらかれる。

想像の世界は、<聴く>ということのなかに、いっそうひろがってゆく。<見る>ということ以上に。

それでも、<見る>ということも加えてみるのも、ひとつの方法である。探査機「Curiosity」がとらえた火星の地表の「パノラマ」は圧巻である。夜空に赤く光る、火星という赤い惑星の地表を、とても鮮明に、ぼくたちは見ることができるのだ。

YouTubeにアップロードされている「Namib Dune(ナミブ砂丘)の360度ビュー」へのリンクを、ここでは挙げておきたい。


「NASA’s Curiosity Mars Rover at Namib Dune (360 view)」(by NASA Jet Propulsion Laboratory)


そこから、もう少しビューをひろげて見ると、いっそう、火星の風景を、ぼくたちは目にすることができる。探査機「Curiosity」の旅路などの解説(英語)も加えられているが、火星の地表の「眺望」(scenic overlook)として、つぎも圧巻である。


「Curiosity at Martian Scenic Overlook」(by NASA Jet Propulsion Laboratory)


この探査機の名前(「Curiosity」)のごとく、NASAのJPLの研究者たちだけでなく、ぼくたちの「好奇心」をどこまでも駆り立ててやまない画像たちである。その好奇心に導かれながら、ぼくたちは、想像の翼をいっぱいにはばたかせることができる。


ところで、宇宙における「音」について、「世界は音」というコンセプトに触れている、社会学者・見田宗介の言葉を以前紹介した。

社会学者の見田宗介は、古代インドのコンセプトであり、ジャズの大御所ベーレント(Joachim-Ernst Berent)の著作のタイトル『世界は音ーナーダ・ブラフマー』(人文書院)にもなったコンセプトに触れながら、つぎのように書いている。


…わたしたちが、じっさいに音を聴くことができるのは、空気や水、大地などという、濃密で敏感な分子たちのひしめきの中だけである。<宇宙は音>というイメージは、わたしたちの意識を宇宙に解き放つとともに、また幾層もの<音>の呼び交わす、奇跡のように祝福された小さな惑星の、限定された空間と時間の内部に呼び戻しもする。

見田宗介『現代日本の感覚と思想』(講談社学術文庫、1995年)


火星という環境の「分子たちのひしめき」のなかで記録され、そしてこの青い小さな惑星で<聴く>ことのできる、火星の「風の音」。

どこまでも好奇心をかきたてる音でありながら、他方で、この地球の「風の音」へと、呼び戻しもする。「奇跡のように祝福された小さな惑星」の自然が奏でる音たち(また、水があり木がありという風景)が、いっそう鮮烈に、ぼくの意識へとのぼってくる。

火星の「風の音」を聴きながら、そこに重層するように、地球の「風の音」を聴く。この耳に直接にとどく「風の音」を感じる。

観客の女の子の「声」がつくったミュージカル。- 香港で鑑賞したミュージカル『Mamma Mia!』(マンマ・ミーア!)。 by Jun Nakajima

香港の湾仔に位置する「The Hong Kong Academy for Performing Arts」(香港演芸学院)のシアターでは、毎年ミュージカル公演がある。2019年1月には『Mamma Mia!』(マンマ・ミーア!)が開幕する。

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本(テクスト)と読み手の相互的なかかわりあいのなかで。- シュリーマン『古代への情熱』を読んだ「昔」と「今」のあいだ。 by Jun Nakajima

だいぶ昔に読んだ本で、また読みたくなるような本。そして読みたくなって、その本をふたたび手に入れて、読んでゆく。ぼくにとってのそんな本の一冊に、シュリーマン『古代への情熱ーシュリーマン自伝』村田数之亮訳(岩波文庫、1954年)がある。

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香港で、ふたたび「人口」に焦点をあてる。- 『2017年香港家庭計画知識、態度及び実行調査』結果を見ながら。 by Jun Nakajima

ブログ(2017年9月12日)「香港で、「香港人口予測」(2017年-2066年)から考える。- 個人・組織・社会の「構想」へ。」で、香港政府が発表した『Hong Kong Population Projections 2017-2066』(香港人口予測 2017年-2066年)をもとに、香港の人口予測について、巨視的な視点をふまえて少しのことを書いた。

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「食べ過ぎの心理」について。- 「体を知り尽くしていた」野口晴哉の視点。 by Jun Nakajima

「食べ過ぎの心理」と聞くと、ついつい、知りたくなってしまう。ぼくはとくに「食べ過ぎ」をすることはないのだけれども、それでも、やはり知りたくなる。とりわけ、あの野口晴哉先生が語る「食べ過ぎの心理」となれば、なおさらのことだ。

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「2018年の一冊」を選ぶ。- 2018年に「世界に放たれた」書物。 by Jun Nakajima

2018年も12月に入って、ここ香港もそろそろ冷えこんでくると思いきや、ここ数日は日中25度くらいまで気温が上がり、汗ばむような気候だ。来週はだいぶ気温が下がるようで、「香港の冬」の雰囲気がよりいっそう感じられるかもしれない。

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「日本だけ」と言われることを体験・経験のなかに確認しながら。 - 異国での<書き換え>。 by Jun Nakajima

日本をはなれての異国の地における短い旅や異国に住むことを、それなりの長い時間をかけてしてきたなかで、それらの体験・経験がぼくのなかに少しずつ積層しながら、ぼくはときどき思うことになります

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